<深層レポート>
米国防産業のサプライチェーンに潜む脆弱性
2018-1/2-131
末野由広
―ワーム(「F-35B」パイロット)が加速して遠ざかると、ミサイルはその信号を捕捉し、追尾した。(中略)激しい回避機動を行った。それでふり切れるはずだった。だが、きょうは何をやっても効果がなかった。ミサイルはどんな動きにも追随してきた―
2015年に出版された、P ・W・シンガーとオーガスト・コールによる「中国軍を駆逐せよ!ゴースト・フリート出撃す(上・下)」(二見文庫)の一節である。架空の軍記物の類ではあるが、小説に化体する形で米国防産業が抱える深刻な問題を鋭く提起している。
舞台は近未来―中国がマリアナ海溝で大規模ガス田を発見したことを契機に、太平洋の制海権掌握を目指し、米軍の駆逐に乗り出す。中国軍は手始めに、宇宙空間のレーザー兵器によって、米国の軍事衛星を破壊し、通信・偵察能力を無力化。サイバー攻撃や米国防産業のサプライチェーンに潜んだ“中国製マイクロチップ”によって、高度にネットワーク化された米軍は機能不全に陥ってしまい瞬く間に撃破され、在日米軍とハワイの司令部を失う...というのが 前段部分のあらすじである。本書は、サイバー攻撃のほかにも、高出力のレーザー兵器やレールガン、3Dプリンターなど様々な近未来の軍事技術が登場するが、本稿では、米国防産業のサプライチェーンに潜んだ“中国製 マイクロチップ”に焦点を当てたい。