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   【朝鮮半島の危機に臨む米陸軍情報組織の近況】
          知られざる在韓米軍・第501軍事情報旅団
      陸上自衛隊幹部学校・元戦史教官 高井三郎 2017.5.20 記
 米国は、政府及び軍の情報組織を挙げて北朝鮮側の動向察知に努めている。特に陸軍情報保全軍(US ARMY Intelligence & Security Command:INSCOM)隷下の第501軍事情報旅団(501th Military Intelligence Brigade:501MIB)は、在韓米軍の他、米太平洋軍司令部(ハワイ)及び国防総省にも情報を上げるという重要な役割を果す。なお、陸海空軍から成る在韓米軍(USFK) の司令官、カ-テイス・M・スカパロッテイ大将は、国連軍(UNC)、米韓連合軍(CFC)の各司令官を兼ねている。 

 501MIBは、在韓米陸軍の主力、第8軍の司令官、ト-マス・バンダル中将の指揮を受け、半島及び東アジアの情報を収集分析する。北朝鮮の不穏な動向から半島の危機が迫る今、同旅団の編成、配置及び活動の大要を紹介し、軍事情報活動の重要性を再認識する一助にしたい。
 旅団は、デレク・S・リ-大佐以下、将兵約1300人から成り、本部を、ソウル・ヨンサン(竜山)の衛戍地(garrison) に置く。その隷下5ヶ軍事情報大隊(military intelligence battalion:MIBN) のうち、各2ヶ大隊は、ヨンサンとその南約100キロのピョンテク(平沢)・キャンプハンフリに分駐し、1ヶ大隊は米本国に待機する。以下は各大隊の配置、編成及び任務である。   半島地図(軍事雑誌「丸」)

★第3軍事情報大隊;ピョンテク
 軽航空機14機をもって、MDL(military demarcation line:軍事境界線)正面における航空偵察により、通信電子情報等を収集する。
・A中隊:DHC-7(旧RC-7)ARL・デハビランド4発偵察機 3機
     DHC-8サタ-ン・デハビランド双発偵察機 3機
・B中隊:RC-12ガ-ドレイル・ノ-スロップグラマン双発偵察機8機
 各偵察機は、通信(COMINT) 、信号(SIGINT) 、前方赤外線(FLIR) 、昼間画像(DIS)、移動目標/合成開口レーダ(MTI/SAR)、動画ビデオ(FMV)、航空写真(IMINT)、計測データ(MASINT) を含む、多様な情報を収集する。機上の情報員は収集資料を即時分析し、僚機及び地上の情報中枢に対し、UHFデ-タ伝送する事ができる。       1 
DH-8に搭載する植生レーダ(FOPEN)は、樹林や茂みに潜む兵員の姿を鮮明に写し出す。同じく地中探査レーダ(GPEN) は、MDL地下の坑道を探知する。        
各偵察機は、MDLの約30キロ南の2千ないし8千メ-トル上空を、MDLに並行して飛行し、北朝鮮の約120キロ縱深に及ぶ地域に対し、側方監視空中レーダ(SLAR) によるスウイ-プを繰り返す。なお、各機当りの1飛行任務は、8ないし10時間である。MDLから南に30キロ離れた空路は、北朝鮮軍の第1線に配備された近距離SAMの有効射程外になる。  写真:偵察機(米統合作戦教範 :TS-06-02 2008)
★第532軍事情報大隊:ヨンサン
 主として半島一帯の人的情報(HUMINT) の収集及び対情報活動を行う。
・第521軍事情報中隊  ・第427対情報分遣隊
★第719軍事情報大隊:ピョンテク
 MDL沿いの3ヶ通信所を運営して北朝鮮側の全通信を傍受記録し、戦略情報及び作戦・戦闘情報を分析する。
・A中隊 SIGINT  ・B中隊 情報分析
★第368軍事情報大隊(陸軍予備);カリフオルニア州キャンプパ-ク
 基幹要員をもって予備役将兵の訓練し、半島に急派する電子戦部隊である。     ★第524軍事情報大隊:ヨンサン 532大隊と大体同じ任務を遂行する。
・A中隊 対情報、尋問 ・B中隊 対情報、部隊保全の支援
 米第8軍報道(2017.5) によれば、大隊は、米2018会計年度に基く活動費が認められる本年10月以降、難事中の難事である北朝鮮への潜入と協力者の獲得を活発化する。その主要な狙いは、衛星、通信電子技術では対応できない北朝鮮首脳部の動向と核兵器開発の実態の解明に在る。要するに、孫子以来の伝統的な人的情報及び諜報活動は、依然、価値を失っていない。

 在韓米軍の上級部隊・米太平洋軍(US PACOM) は、日本列島、沖縄の空軍電子戦機、海軍監視船などにより、半島一帯に層の厚い情報組織を構成する。 
 501MIBの上級部隊・INSCOMは、バ-ジニア州フオ-トベルボアに司令部を置き、将兵1万人と年間6千億円の経費をもって、アジア太平洋域始め世界規模の情報活動を行っている。■
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主要参考資料
J T.RICHELSON “THE US INTELLIGENCE COMMUNITY” 7th edition WEST VIEW 2016
INSCOM 在韓米軍 各HP