朝鮮半島情勢を巡るロシアの立場

朝鮮半島情勢を巡るロシアの立場
末野由広

 6月12日に実施された米朝首脳会談は、史上初の米朝首脳の接触という意味では、非常に意義のあるものであった。しかし、結果としては、トランプ大統領は従前からの立場であるCVID(完全で検証可能かつ不可逆的な非核化)はおろか、非核化に関する明確な言質はなんら引き出せなかった。そればかりか、米韓合同軍事演習の中断を決定し、果ては、在韓米軍撤退の可能性についてまで言及するなど批判されるべき点が多い。

 少なくとも、首脳会談前日にポンペオ国務長官が「米国が受け入れられる唯一の立場はCVIDだ」と発言したり、マティス国防長官が首脳会談では在韓米軍に関する話は「しない」と語っていたことを考慮すると、期待と結果には強いコントラストを感じてしまう。
  その一方、金正恩は、非核化に関して明確な言質を何ら与えないまま、米国から当面の体制保証を勝ち取った。これで、トランプの言う「協議が上手くいっている間」は、体制危機に直面することは回避できよう。
 とはいえ、昨年までの軍事衝突の可能性の高まりを考えれば、首脳同士が直に接触し、例え一般的な原則であったとしても合意に至った点は、長期的な非核化プロセスの観点から見て必ずしも悲観的なものではない。第1ラウンドは、北朝鮮の優勢と言えようが、第2ラウンド、継続協議は既に始まっている。

 さて、今回の米朝首脳会談を含めて直近の朝鮮半島情勢を見るに、米国と北朝鮮、そして中国がゲームの中心円に位置するとすれば、ロシアは、その一歩外側にいるということになるだろう。しかし、だからといって、ロシアがプレゼンスを十分に示せていないというわけでもないし、また、自らの国益を反映させる試みを行っていないというわけでもない。ロシアは、中国と共同歩調をとりつつも、露中共通あるいは独自の国益を反映させるべく陰日向に強い関与を続けている。今回の論考では、朝鮮半島情勢に対するロシアの立場に焦点を当てて、記述したい。 続きを読む

フィリピン・ダバオ市日系・八木学園で入学式

 これまで、本誌上で、フィリピンの教育制度改革が進められており、中等学校と大学の間に、新たにシニアハイスクールを設けるようになったことを紹介してきました。
 この政策に沿って、今年、フィリピン・ダバオ市の日系・八木学園でも6月に2年制のシニアハイスクールが発足しました。2005年、わずか8名の幼稚園からスタートした八木学園(当時は八木幼稚園)ですが、小学校、中学校と拡充し、このたび制度改革にあわせて、中等学校の上にシニアハイスクールをスタートさせたものです。シニアハイスクールの発足で、生徒数も280名に達しました。
 6月16日、ダバオ市郊外のバンカス校舎で開かれた入学式には、生徒や父兄、関係者ら約300名が出席しました。

創立者の八木眞澄氏のあいさつ        各学年の催し物で入学式も盛況

   先達徳男氏が設立を支援

 式典では創立者の八木眞澄氏やシニアハイスクールのレイア総責任者の挨拶の後、このスクールの設立を支援してきた先達徳男(せんだつ のりお)氏も日本から駆けつけ「13年で、こんなに大きくなった八木学園の更なる成長が楽しみです」と祝辞を述べました。先達氏は東京や千葉で介護施設を営むかたわら、たびたびダバオに足を運び、財政的にはまだ十分ではない、八木学園を支援してきました。
 以前、本誌で自らは中古の軽自動車に乗りながら、高級外車が買えるほどの支援をしていることを紹介しました。その後、車は買い換えましたかとの問いに対しては「レクサスは買えないけど、ホンダN・BOXにバージョンアップしました」と笑顔で返してきました。
ちなみにN・BOXも軽自動車です。

 図書館は菊地民雄氏が支援

 また、先達氏の友人で同じく千葉や神奈川で介護施設を営む菊地民雄氏も式典に駆けつけ、シニアハイスクールの図書館の書籍等を寄贈し、「菊地ライブラリ」と名付けられました。フィリピンでは学校設立の基準のなかに、図書館の設置と蔵書についても必須条件があります。スクール設立だけでも大変だという実情を受けて、菊地氏が図書館施設と蔵書の支援を申し出たものです。両氏はこれまでも、小学校の校舎増設などの支援を行っており、生徒の成長に合わせるように支援を継続しています。

今年の式典では、フィリピン版スター誕生のテレビ番組で優勝し、今やフィリピン中の人気者になった 7年生(中1)のモニカさんが妹と共に歌を披露したほか、幼稚園、小学生、中等生など各層のアトラクションも相次ぎ、華やかなセレモニーとなりました。

                                (坂内 正)

シニアハイスクール施設を支援した先達徳男氏   今やフィリピン中の人気者・モニカさん(左)と妹
  

   ミンダナオ国際大学(MKD)も3年振り入学式

 同じく、フィリピン・ダバオ市の日系・ミンダナオ国際大学(MKD)の入学式も6月14
日、同大学講堂で開かれました。
 今年の入学者は101名ですが、最近の情勢を反映してか、約7割が日本語学科を選択しています。今年の入学式ではイネス・マリャリ学長のほか、ダバオ日系人会のエスコビリヤ会長、日本領事館の三輪芳明領事らも来賓として出席し、祝辞を述べました。
 MKDも今年から教育制度改革に沿っての編成になりました。2年間入学式がなく、3年振りに迎えた新入生はほとんどが18歳で、それまでの16歳入学の学生より大人びた感じです。今年度から18歳入学、22歳卒業という他の先進国と同じ大学制度になります。

MKDの入学式は同大学講堂で開かれた          入学式であいさつイネス学長

 
三輪 芳明在ダバオ領事                  エスコビリヤ・ダバオ日系人会長 
                             

本誌既報の韓国映画問題作「タクシー運転手」が日本公開

韓国映画「タクシー運転手」がゴールデンウイーク向けに日本で公開され、重いテーマにもかかわらず、かなりの観客動員数をあげて、注目されている。

 この映画については、昨年10月に発行した本誌129号で、韓国での大ヒットと同時に注目された奇妙な事実について、「文世光、光州事件、タブレット ―日本の学生運動、韓国の民主化運動と北朝鮮をつなぐ点と線―」というコラムで紹介している。 続きを読む

特別天然記念物「トキ」をめぐる動きについて

ライター 末野由広

政府は3月30日、新天皇即位に伴う式典準備委員会第3回会合を開き、「即位礼正殿の儀」を10月22日に行うとの基本方針を決定した。これに先立ち、来年5月1日には、「剣璽等継承の儀」が行われ、皇位が継承される。いよいよ平成の世が終わる。

さて、タイトルを「トキ」にしておきながら、冒頭から新天皇即位の話で唐突感があるだろう。しかし、あまり知られていることではないが、実はトキと皇位継承には深い関係が ある。

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米国防産業のサプライチェーンに潜む脆弱性

<深層レポート>

米国防産業のサプライチェーンに潜む脆弱性

2018-1/2-131
末野由広

―ワーム(「F-35B」パイロット)が加速して遠ざかると、ミサイルはその信号を捕捉し、追尾した。(中略)激しい回避機動を行った。それでふり切れるはずだった。だが、きょうは何をやっても効果がなかった。ミサイルはどんな動きにも追随してきた―

 2015年に出版された、P ・W・シンガーとオーガスト・コールによる「中国軍を駆逐せよ!ゴースト・フリート出撃す(上・下)」(二見文庫)の一節である。架空の軍記物の類ではあるが、小説に化体する形で米国防産業が抱える深刻な問題を鋭く提起している。

 舞台は近未来―中国がマリアナ海溝で大規模ガス田を発見したことを契機に、太平洋の制海権掌握を目指し、米軍の駆逐に乗り出す。中国軍は手始めに、宇宙空間のレーザー兵器によって、米国の軍事衛星を破壊し、通信・偵察能力を無力化。サイバー攻撃や米国防産業のサプライチェーンに潜んだ“中国製マイクロチップ”によって、高度にネットワーク化された米軍は機能不全に陥ってしまい瞬く間に撃破され、在日米軍とハワイの司令部を失う...というのが 前段部分のあらすじである。本書は、サイバー攻撃のほかにも、高出力のレーザー兵器やレールガン、3Dプリンターなど様々な近未来の軍事技術が登場するが、本稿では、米国防産業のサプライチェーンに潜んだ“中国製 マイクロチップ”に焦点を当てたい。

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情報と調査 注目記事

 「情報と調査」128号から

 【朝鮮半島の危機に臨む米陸軍情報組織の近況】
          知られざる在韓米軍・第501軍事情報旅団
      陸上自衛隊幹部学校・元戦史教官 高井三郎

 
 米国は、政府及び軍の情報組織を挙げて北朝鮮側の動向察知に努めている。特に陸軍情報保全軍(US ARMY Intelligence & Security Command:INSCOM)隷下の第501軍事情報旅団(501th Military Intelligence Brigade:501MIB)は、在韓米軍の他、米太平洋軍司令部(ハワイ)及び国防総省にも情報を上げるという重要な役割を果す。なお、陸海空軍から成る在韓米軍(USFK) の司令官、カ-テイス・M・スカパロッテイ大将は、国連軍(UNC)、米韓連合軍(CFC)の各司令官を兼ねている。 

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